2022.2.16更新

真田紐|02|古いこと新しいこと バランスをとりながら立派な木に

今回は日本で最後の手織り 真田紐師「江南」和田伊三男さんのお話。真田紐は、証明書のような役割をもつ秘密の詰まった紐。江南では機織り機の調整から糸の染め・織り・加工・機織り機の調整まで全て15代目になる和田さんご夫婦でされています。

 

#2  古いこと新しいこと バランスをとりながら立派な木に

 

自分の目と感覚で糸と会話する。だからあったかい。

 

 

──時間短縮や機械の導入で工業が発展したり。劣えた部分は様々ですが、手仕事の面白さや難しさはなんですか。

 

機械というのはずっと同じ調子で織れるので綺麗にはできるんです。手織りでやる場合でも同じ調子で織らないといけない。だから平常心で織ることが必ず大事。例えば腹が立っている時に織ると力が入って目が細かくなり、トイレで離れるだけでも手の力が変わります。糸自体、太いところと細いところが微妙にあるので、糸と会話しながら織っていかないと良いものができない。ものを作りながら目で見て、 判断して、織る。機械は見もしないし考えることもできないから風合いが出ず、無機質になるけど、その点手づくりは風情が出てあったかい。生産量としてはやはり機械の方が上だけれど。

 

 

──技術はお父様の技から学んだのですか。

 

真田紐は女系でやることが多いんです。僕の場合も祖母と母親がやっていたので、 小さい頃からその手伝いをしていました。当主(父)は指物の方をやっていて忙しかった。祖母と、その孫が織るので1代飛ばしに技や当時の話が自然と伝承されてきました。僕は高校、大学はアメリカに行って、30頃に戻ってきました。伝統工芸の人って小さい頃から家にずーっといる。閉塞感があることで中学高校の頃は反発して違う方向に行ったりして、素直に後継ぐ人は少ないです。

 

 

──真田紐のこれから、どのようにお考えですか。

特性を生かして「あんなこともこんなこともできる」という可能性を突き詰めたい。すると自然に新しいものもできると僕は思います。新しいことをやるときに、その発祥になった昔に戻って考えると幅が広がります。例えばカーボンなど、素材を変えても面白いんじゃないかな。昔最強なのは紐でしたが、今は最強なものが沢山あると思います。ただ真田紐の“伸びない・目を摘んでいく・織っていく”という構造は他にない強いところなので、他の素材でも試していきたいなと思う。その一方で、今までの使い方以外の用途を見つけて、それに合わせた織り方も開発できたら面白いと思う。

 

 

──KYOTO T5の活動やインタビューなどを通し、若者の目線で京都を見つめ、新しい京都を発見したいと考えています。和田さんにとっての『OLD IS NEW』はなんですか

 

昔からうちの祖父が言っていたのは「店っていうのは木。根っこの部分が昔からずっとやってきている伝統的なこと。幹はその会社が大きくなっていくための土台。 葉っぱが新しいこと。 新しいことだけに手を出すと、葉っぱだけが広がって幹に光が当たらなくなって木が倒れる。昔からのことばっかりやっていると、根っこだけが伸びて葉が育たず木 が倒れてしまう。バランスによって木は大きくなる。だから新しいこと、古いこと のどちらもやらないといけない」と。これはいろんなことに通じると思います。今の産業は新しいものばかりがあるでしょ。ものづくりにおいて世の中の移り変わりが早く、流行り物っていうのは2、3年経つと消えて次の流行り物に移る。僕らはそういうわけにいかない。立派な木にならんと。

 

 

 

(おわり)