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「一人の職人が作る」桶屋近藤
京都の大徳寺近くに工房を構える「桶屋近藤」。
木材を選ぶところから全ての工程を職人である近藤太一さんが一人で行っておられます。
近藤さんが桶を作るきっかけとなったのは大学の先輩に誘われ桶作りの手伝いに行ったことから。
桶の魅力に感銘を受け、自らで作る道を選んだそうです。
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室町時代から続く林業と桶
この桶には奈良県南部に位置する吉野地方でとれる吉野杉が使用されています。
吉野杉の植林の歴史は古く、およそ500年前室町時代に始まったとされています。吉野杉は「節が少なく、年輪が細かく、まっすぐな材」なので水が漏れにくい酒樽や桶をつくることができます。カンナで削られた木肌はキラキラと光っていて、優しい杉の香りがします。
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薄くて繊細な京都
お客さんの要望に答えることで職人さんの腕は上がります。
京都のお客さんは目が肥えていて厳しいから、高い技術を求められるそうです。
桶をよく見るとフチの厚みが底から口にかけて薄くなっています。その理由は“京都だから”。京都の人は繊細なものが好みであるということが、フチという小さなところにも表れています。
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底が浮いている理由
底を見ると少し隙間があり浮いているように見えます。
裏返してみると底のフチが斜めに面を取ってあります。
これは底と地面の接地面を減らし黒ずむのを防いでいます。
水を扱う桶だからこそ、この工夫がなされています。
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愛される気遣い
一目ではわからない所に気遣いという美しさがあります。
フチを薄くするのも、斜めに面をとるのも職人が自ら仕立てるカンナによって一つ一つ丁寧に形作られいます。
そのひと手間かける気遣いが使いやすさとなり長く愛される品となっていきます。
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使いやすさは持てばわかる
手に取ってみると、まず初めに軽さに驚きます。
使いやすさは、素材の肌触りや軽さだけではなく、計算されたサイズからも感じます。
女性でも片手で持ちやすくなっており、フチの若干の丸みがやさしく指にフィットするおかげでさらに持ち心地のよさが生み出されています。
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バケツか、桶か
今とは違い昔はプラスチックがありませんでした。なので水を汲む作業一つでも桶が使われており、今で言うバケツのような存在の桶が生活には欠かせないものでした。
水一つ汲む作業がプラスチックではなく、やさしい木の素材になるだけでも暮らしはもっと豊かになるはずです。
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キッチンにも似合う
夏野菜を冷やしてみました。
桶に入れると涼しげに見えるので暑い夏にも似合います。
湯桶だからお風呂が一番。ということはなく手になじみやすい追及された大きさと形だからこそ、他の水回りであるキッチンで使うのもおすすめします。
お米を洗ったり、野菜やお酒を冷やすのにも最適で、なんといっても様になります。
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何を入れても馴染む
水回り以外でも様々なところでお使いいただけます。
例えば本や小物を入れたり、果物を入れるバスケットの代わりにもなります。シンプルだからこそ用途や場所を選ばない使い方ができるのも魅力です。
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桶の需要は無くならない
職人の近藤さんは「桶の需要は無くならない」と仰っていました。桶は寺社仏閣では必要なものであり、桶の良さを知っている人がいます。桶の良さは修理して使い続けられるということです。
そのことを知っている人がいる限り桶の需要は無くならないのです。良いものは長く使える、というよりも、長く使えることを知っている人そしてなおせる職人がいるからこそ、ものは長生きします。