2022.2.15更新

金網のつりかご|02|つかうひと 小桧山聡子さん

「つくり手」の思いを「つかい手」が生活に取り入れ、使い続けるから、伝統がつながっていく。ひとつの工芸品について「作る人」と「使う人」それぞれのインタビューから見ていきます。

 

今回ご紹介するのは、山フーズ・小桧山聡子さんです。食を通して、工芸品にどのようにアプローチしたのか。小桧山さんの工芸品のある暮らしを伺いました。

 

 

山フーズ小桧山聡子さん

山フーズ主宰。東京を拠点に「食とそのまわり」にあるもの、こと、感覚などを研究、創作しさまざまな形で提供。ケータリングや食を用いた撮影、ワークショップ、講演会、執筆活動から商品開発まで、幅広くご活躍されています。「おいしいってなんだろう」「食べるってなんだろう」ということを日々考えているそうです。

 

山フーズ憧れの「辻和金網」

 

 

──「金網のつりかご」について使用前のイメージや知識などはありましたか?

 

辻和金網さんの焼き網はまわりでも人気なので知っていました。が、私は何度も買おうとしつつもタイミングを逃し、未だ安い金網を使っていて、憧れの「辻和金網」として認識していました。茶漉しや、湯豆腐杓子は実家で使っていて、網目の美しさや使うほどに変化していく様は体感として知っていて、いいなぁと思いながら使っていました。今回のつりかごなど、こんなに多様なラインナップがあることは、ホームページを拝見して初めて知りました。

 

──生活にどのように取り入れたり、使用しましたか?

 
自分のキッチンアトリエで使用してみたのですが、普段からいろいろなものを吊るしてあるので、引っ掛けられるところは無数にあり、こっちにあっちに様々入れて試してみました。かご状のものは、通気性の良さ、中身が見える、丈夫といった利点があり、非常に使い勝手がいいので大好きなのですが、まずは普通ににんにくやレモンなどを入れてみました。吊るしてももちろんいいのですが、吊るさなくても見栄えがいい。そして取っ手の形が絶妙に気持ちよく、畳んでも開いても様になる。うーん、これはいいぞ!と次はさらしやお手拭きなどの布類を入れてみました。これもまた清潔感があっていいし便利。

 

包容力抜群、金網のつりかご

 

 

──レモンも布類も、良い感じに馴染んでいてオシャレですね


でしょう?お次は通気性の良さを生かして、洗って拭いた後のグラスや、木製のカラトリーを入れてみました。木製のものは普段から、拭いてからざるなどに入れて完全に乾くまで置いておくのですが、こうやって吊るしてあると収まりもよく、気分もいいですね。グラス類は、キッチンに超強力マグネットフックがあったので、それでがっちりと固定して吊るしました。重いものは強力なマグネットでないと危険です。

 

つりかごのなんでも受け入れてくれる包容力にうっとりし始めた時、ハーブを生けた花瓶が目に止まりました。ローズマリーやミントなど、料理に使うハーブを育てているのですが、彩と香りを楽しむためにキッチンによく飾っています。これをつりかごに入れてみると、繊細な手編みの網目と緑が良く合って、驚くほど素敵でした。いそいそと陽の当たる場所へ移動。すると網目がさらに美しく際立ち、しばし見惚れてしまいました。この美しさは手編み故ですね。影さえも美しい。そうしてもう一度、何も入れずに網目をじっくり眺めながら愛でました。裏返して置いておくだけでも美しいですね。中に灯りを入れたりしたら影がまた綺麗かもしれない。などと妄想しながら、工芸品は使って心地よい美があるだけでなく、そこに置いてあるだけでも、その存在自体が美しいのだなと改めて思いました。

 

足りていないところなど、ない

 

 

──気づいたことや感想を教えてください


実は同じような金属のつりかごをキッチンでも以前から使っていました。しかし、それには雑多なものを適当に詰めて吊るしており、今回のように、わくわくしながら色々なものを入れたり出したりするようなことはしたことがありませんでした。改めて、そのものが持つ力のようなものを感じました。想いのあるものに触れていると、こちらの行動も心も動かされます。それがここにあるかないか。存在が何かを変えるのです。触れていて嬉しい、というのが工芸品の心地よさなんだろうなと思います。


──使う上で、もっと良くなりそうと思ったところや注意点はありますか


足りていないところなどないのではないでしょうか。あえていえば、こういうものがあることを、選択肢の一つとして幅広く知られていけばいいなと思います。手に取りやすくする環境づくりというか。これから、経年変化を味わいながら使い続けることがとても楽しみです。

 

──さいごに独自の切り口で、「金網のつりかご」に星をつけてください


・使うよろこび:★★★★★

・使いつづけるよろこび :★★★★★